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活字中毒患者の書籍購入法 [日常]

もだえ苦しむ活字中毒患者。

今更なにをか言わん、であるが私は活字中毒である。
文字というものを自力で解読できるようになってから幾星霜
とにかく字さえ書いてあればなんでもいいとばかりに
読みあさってきた。
先日お会いした編集者の方に
『どんな本を読まれますか?』と聞かれて
あれこれ並べてみたら
『本当にいろいろ読まれるんですねえ……』と
褒めているのか呆れているのかわからない反応だった。
そんな会話を交わしている最中にも私の目は
どこかに活字はないかなーなんて泳いでいるのだから
我ながら呆れ果てる。

それはさておき、そんな重症患者である私だから
興味を引かれるタイトルにであった日にはもう大変。
あ、これ、読みたい! という思いに満ちあふれ待ったが利かなくなる。
実は昨晩もそんなことがあった。
夕食を終え、片付けも終わり、お風呂にお湯をためている最中
メールチェックついでにネットサーフィン。
そして見つけた一冊の本が、もう気になって気になって……
ネット書店を検索したら在庫はあった。
カートに入れる、をポチッと押して支払い手続きを終えれば
明日にでもその本は私の手元にやって来る。
だがしかし……その『明日にでも』が待てない。
時計を確かめると、時刻は午後8時……
十秒ほど迷ったのち、私は階上にいる娘に叫んだ。

「ごめん、ちょっと本屋行ってくる! お風呂入っておいて」

かくして、車のキーを握り家を飛びだした私は一路本屋へ。
ショッピングセンターの中にある本屋は午後九時閉店。
近隣で一番品揃えがいい本屋は午前二時まで。
当然、ショッピングセンターの本屋が先だ! と車を飛ばす。
その時点で、たぶん、ここにはないだろうな……と薄々感じていた。
私が興味を引かれたのはかなりレアな分野の本だったし
購買層はあきらかにショッピングセンター利用客から離れている。
それでも、万が一ということもあるし…と思いながら訊ねてみたレジのお姉さんは
さくさく検索したのち、あっさり首を横に振った。
『当店には在庫がございません。取り寄せ注文になりますが……」
なりますが……の後に続いた三点リーダーに
在庫がない本を取り寄せで頼む客の少なさが現れていた。
そりゃそうだ……ネットでポチれば明日には届いてしまうし
店まで取りに来る必要だってないのだ。

肩を落としつつ、少し離れた品揃えのいい本屋に行ってみたけれど結果は同じ。
違ったのは、その店には検索機があって
レジのお姉さんを煩わせずすんだことだけだ。

あーあ……やっぱりか……

結局、家に帰った私はその本をネットで注文した。
本当は本屋さんで買いたかった。
町の本屋さんの苦境など百も承知だ。
一冊でも二冊でも本屋さんで買いたい気持ちはあるのだ。
でも本屋で取り寄せた場合にかかる時間がそれを阻んだ。
私が読みたいのは『今』なのだ。
明日なら何とか待てるがそれ以降となったら興味は失せかねない。
興味を失った状態で読む本は内容にかかわらず楽しめない。
楽しめないままに読んだ本は書いた人や版元さんの評価をゆがめる。
それは失礼極まりないことだと私は思っている。
だからこそ興味が失せないうちに、読みたいうちに、と焦ってネットで注文する。
ネット書店に在庫がなかったらもうその本は諦める。
そんな読者が私の他にもきっといる……はずだ。

入浴を終え、ベッドに入った私の手にあったのは
探しに行ったのとはまったく違う本。
店頭で気になった買い込んだものである。

やっぱり本屋さんは良いよなあ……
興味を引かれた本はそのままレジに持って行けばいいんだもの……
お金を払って持って帰ってすぐに読める
待ったがきかない活字中毒患者にとって
これほどありがたいことはない。
出版不況は解消の気配もないし
とりあえず気になった本は本屋さんに探しに行って
なければ別の本を買って帰る、っていうのも
ひとつの手段なのかもしれない……
問題は、書籍代がふくれあがってにっちもさっちも
いかなくなることだけど……(苦笑)




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コメント 6

チーママ

さすが!作家さん!
そんなに活字がお好きなのですね。
私は 「趣味 読書」と書ける程度の
人間ですが、それでも 読みたい本を
全部買っていたら お財布は軽くなるし
それ以上に置き場所が…
秋川家では その様な問題は
ないのでしょうか?
by チーママ (2016-03-09 19:38) 

ゆうのすけ

まさに ”なう!” に欲しくなる気持ち。。。よ~く判ります!
私の場合は 頼んだにもかかわらず じっとしてられなくて
車のキーを回し探しに行くのは CDだったりするんですね。
そしてない場合は 他の物を。。。^^;
あ!書籍の場合は 秋川滝美さんの作品のみです。^^v
はてさて今月末の「いい加減な夜食4」は ネット買いになるか 書店に駆け込むか。。。現在のところ未定です。☆
by ゆうのすけ (2016-03-09 19:56) 

高遠

私も活字病ですが、さすがにそこまでは……(笑)
少し前までは鞄の中にかならず文庫がはいっていましたねえ。
今はiPad。おかげで随分と鞄が軽くなりました。
活字病と手芸熱が交互に起こる病気を持っている私にとって本屋はなくてはならないものですね。特に手芸コーナーでは本を手に取ってデザインの確認をしないと買わないですし。さすがにこればかりはwebで購入とはいきません。
そろそろまた手芸熱が出始めたので本屋にいかなければ。(夜中じゃないですよー)
by 高遠 (2016-03-09 21:15) 

足立sunny

本屋さんに入って手ぶらで出てきたことは一度もありません(ちゃんとお金は払ってます)。そういう人が増えればいいですが、立ち読みばかりする昨今の風潮には、かなりうんざりしています。ちゃんと買って読め!と言いたい。
by 足立sunny (2016-03-10 22:17) 

ジル

こんにちは。
「ごめん、ちょっと本屋行ってくる」
のセリフが飛び交うのがけっこう日常的なのであろうお家って、しみじみと面白いです^^
それを想像して吹き出してしまいました。
おお、お目当てのものはなくてもぬかりなく別の気になった本が手元に!
本当に本当に、本が好きなんですな。
本屋さんって良いですよね。すぐその場で買える。わかります。
by ジル (2016-03-11 00:45) 

秋川滝美

チーママさん

活字が好きすぎて物書きになってしまった、という感じです。
さすがでもなんでもありません。
確かに読みたい本を片っ端から買っていたら
財布も収納場所も悲鳴を上げるでしょうね。
それなりに選んではいるんですよ、これでも(苦笑)
それでも定期的に整理をしたり、本棚を買い足したり
二重収納にしたり……床が抜ける日は近いかも。

ゆうのすけさん

ですよね! 読みたい、聞きたいはまさに『今』
待ったなしなんですよね!
ネット通販のおかげで最短1日で手元に来ますが
それでも目の前にある本屋さんには勝てません。
だからこそ、本屋さんCD屋さんに走って行ってしまうのです。
こういう人間には、ネットショップ以外のお店は欠かせません。
旨く棲み分けて欲しいと願うばかりです。

高遠さん

タイトルが気になっても中身が想像と全然違うこともあります。
(某腐れ物書きの話なんでタイトル詐欺と叫ばれまくってますし)
やはり書店で中身を確認してから買いたいですよね。
でもすべての本を書店に並べるのは無理……
だからこそのネットなんですよね。
両方必要なんだと思います。

足立suunyさん

立ち読みは立ち読みでいいんですけど
たまには買ってよねーって思います。
でもまあ、私も学生時代は散々立ち読みしましたし
そのおかげで読書好きのまま大人になれました。
お金がなくて読書から遠ざかってしまうよりは
借り本でも立ち読みでもなんでもいいから
ずっと本を好きでいて欲しいなあ……なんて思っています。

ジルさん

別バージョンで『ちょっと電器屋行ってくる』もあります。
でもってPCとかプリンターとか買ってくるわけです。
それに比べれば「本屋」なんて可愛いものです!(きっぱり)
電化製品も本も、始めに店頭ありき。
それでもなければネットへ……ですね。

by 秋川滝美 (2016-03-18 09:56) 

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