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道を辿る力 [小説のこと]

ご無沙汰過ぎて言葉もない。

あれよあれよという間に新年度ころか節分も過ぎ
雛祭りはもうすぐそこ……
例年ながら年の瀬から三月までの速さに驚く。
それはきっと、この時期が旅物の取材期間となっているためで
あっちにいったりこっちにきたりしている間に
気がついたら季節が変わっているのである。

とりわけ今年は、元日早々の地震で
能登地方が大きな被害を受けた。
能登といえば、十一月に刊行した作品で
扱ったばかりの町である。
特に輪島は、取材に赴き、町の隅々まで歩き回った。
朝市通りは火に呑まれて無残な姿、
静かな波を湛えていた海岸線は盛り上がり
キリコ会館も詳報はない。
息を呑むほど美しかったキリコの数々、
キリコの歴史や現在の使われ方を説明してくれた方、
御陣乗太鼓のポスターをくださった売店の方……
朝市で干物をおまけしてくださった漁師のお母さんと息子さん、
お土産にと何膳ものお箸をくださった割烹のご亭主……
皆さん、ご無事だろうか……

ある意味、取材というのは残酷だ。
詳細にメモを取り、何枚もの写真を撮る。
そこに住む人の思いが知りたくて、
できる限り言葉を交わす。
たった一泊、二泊の時間であっても
なんとなく訪れた場合の何倍もの記憶が残る。
そのために取材に行っているのだろう、とわかっていても
被災前の姿を覚えていればいるほど
失われた風景が辛い。

それでも……地震はもう起こってしまった。
過去に戻ることは出来ない以上、
どうしたら立ち上がれるのか
そのために私になにが出来るのかを考えなければ……

復興の道は細く、長く、険しい。
それでもあの町の方々には
その道を辿る力があると信じている。


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こんなことを一緒にするのか! というお叱りを承知で、刊行報告。
この姉妹も彼女たちなりの苦難を乗り越えてここまで来ました。
大災害とは比べものにならないかもしれないけれど、
周りの人々、そして道は続くと信じる力が支えだった思います。
いつかきっと……と思っていただければ幸いです。


『居酒屋ぼったくり おかわり!3』文庫 アルファポリス 2月21日刊行

おかわり3 文庫カバー.jpg




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