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歯を抜いた話 [日常]

乱闘はしていない。

実は三日前、歯を抜いた。
根治と呼ばれる神経治療ではなく
物理的に引っこ抜いた。
なぜなら歯茎の中で歯根が折れていたから。
ただし虫歯でも、殴られたとかぶつけたとかでもなく
『食いしばり』が原因。
寝ている間に歯に圧力をかけ過ぎていたためでしょう…
というのは、私の口中を見た歯科医師の説。
そりゃそうですよね、私の歯は全部見事にすり減っていて
『食いしばり』の教科書に載せたいぐらい。
『食いしばり』の原因はストレスと緊張だそうだで
物書きのストレスなめんなよ! という感じ……
ならよかったよね。

は? 違うの? 秋川話が長い! 
すみません。暇なんです(今、暇と打とうとしたら肥満になった! がる……)

閑話休題。
普段の『食いしばり』はさておき、今回は明確に違う。
なぜなら、当該歯に嫌な痛みを覚えたのはかれこれ半年以上前、
アタリメを大量に食べたあとだった。
元々弱っていたのかも知れないが致命傷はアタリメ。
きっとアタリメ、半年前のアタリメ。硬くて旨みたっぷりのアタリメ。
で、しばらく『痛いなー』が続いたもののなんとなく治まった。
(たぶんこれ、痛みに慣れただけ)
そのあと詰め物が取れて二度ほど歯科のお世話になったけれど
その歯についてはほったらかしていた。

で、三ヶ月前、いきなり腫れて歯科に駆け込んだところ
歯根が折れていることが発覚。
歯科医は、とりあえず腫れを抑える治療をしてみるが、早晩抜くことに……と言う。
ただそのときの秋川は締め切り直前、しかも珍しく締め切りが重なっていた。
(あるのかそんなこと! と自分でも驚くがあったんですよ/笑)
長短二つの締め切りに校正がちらほら……とてもじゃないが
歯を抜いてる余裕はない。
抜歯は必至とはいえ、少しでも先に……と八百万の神に祈りまくった結果
腫れは見事に引き、抜歯の先送りに成功した。

それから、時折怪しい気配になりつつも三ヶ月が経過、
めでたく三日前に抜歯に至った。。
実は、抜歯を決めた時点では痛くもなんともなかった。
ただ今のうちになんとかしないと、とんでもないタイミングで
暴れ出しかねないという判断の下、歯科予約を取ったのである。

私の締め切りはおおよそ三ヶ月に一度やってくる。
(今年こそこのスパンを何とかしようと思っているが
それはまた別の話)
こんなに腫れていてよく平気だね、と歯科医に呆れられる私であっても
さすがに抜歯はヤバいだろうと思った。
だから、ありとあらゆる作業を前倒しして療養期間を確保した。
いつも以上に未完成の原稿を編集担当様にぶん投げ、校正をなぎ倒し
思いつく限りの家事をこなし、家族にも『この期間は活動不能です』と宣言。
鼻息荒く歯科医へ……もうね、まるまる一週間寝込む気満々だった。
担当歯科医は、悲痛な面持ちの私に心配そうに言った。

「また腫れた?」
「腫れてはいません」
『痛い?」
「いえ、あんまり。でも、どうせ抜かなきゃならないなら今のうちにって」
「あ、そう……? とりあえず診ますね」

おそらく、抜いてくれー! とやってくる患者は少ないのだろう。
担当歯科医(けっこうイケメン=ここ大事)は問題の歯の周りを見て
うーん……と呻ったあと、選択肢を示してくれた。

その① やはり炎症があるのでそれを抑えつつとりあえず延命
その② 抜歯後、折れた歯根を修復して植え直す
その③ 抜歯後 両隣の歯を削ってブリッジにする

それぞれのメリットデメリットをしっかり説明してくれる歯科医の頼もしさ……
(常々思っているが、私はけっこう医師運が強い)
で、結果として一番オーソドックスで手がかからないブリッジ選択
目論見どおり、抜歯に至った。
折れた歯根がばらばらになって大変かも……と脅されつつ麻酔。
もはやまな板の上のコイ、診療台の上の腐れ物書き
一週間寝込んでも大丈夫。
痛みも、腫れもばっちこーい! である。

麻酔を打って、ではではと施術にかかってものの数分
いや一分もかからずに歯はあっさり抜けた。
あんまり見たくないだろうけど、と気遣う歯科医もなんのその
ばっちり見せてもらった歯は確かにちゃんと『歯の形』を保っていた。
ワンチャン、ボンドでなんとかできたかも……と思ったものの
すでに神経がない歯だから将来不安は大きい。
すっぽり抜けたことに感謝しつつ、その日の治療終了。
帰宅後直ちに療養生活突入、家族よ、達者で暮らせ
夜になったらお粥を炊いてね、である。

ところがぎっちょんちょん。
抜歯してから五時間後、こともあろうに私はピザを頬張っていた。

家族A「痛くないの?」
私  「縫合したところがチクチクする」
家族B「抜いたところは?」
私  「そこは別に」
家族A「ピザ、食べられるの?」
私  「おいしい」

我ながら、ここまで痛みに鈍いとは思わなかった。
これぞまさしく無神経……(たぶん違う)
まあ帰宅後、速効で痛み止めは飲んだけれど
経過時間から考えても効果はそろそろ切れるころ。
それでも痛くないのだから、未来は明るい。

ご機嫌良く、というか、私がさほど食べない前提で
頼んだピザをばかすか食べたせいで、いささか食料不足気味。
なにか作ろうか……となってしまったのは『とほほ』としか
言いようがない。

結局その後も大した痛みは訪れず
縫合したところの釣るような違和感は
昨日でなくなった。
一番心配だったドライソケットも発生せず
消毒に行ったら治りの早さに驚かれた。
私はもしや人外……痛みを感じづらいのもそのせい?
という疑問はさておき、大事にならずにすんでよかった。

かくして、無理やり捻出した療養期間は不要となった。
7月着手予定の原稿を前倒しすることもできるし
8月刊行予定の校正もそろそろ来そうではある。
でも、とりあえず今はだらだらしよう。
思いがけず得られた貴重な休日だもの……

というわけで、この記事を書いている。
刊行予告以外の記事は本当に久しぶりだし
暇ができても結局書くのか、と呆れてしまう。
おまけに、節電要請もなんのそので
毛布を洗濯しまくってる不届き者。
だってお日様がもったいない。
三時までには終わらせるから勘弁してねーである。




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追伸 刊行予告以外と言いつつ、ちらりと……
   7月下旬から8月上旬にかけて、3作刊行いたします。
   単行本一冊、文庫二冊(うち一冊はアンソロジー)ですが
   すべて書き下ろしとなります。
   書影が公開になりしだい、刊行予告を上げますが
   立て続けとなりますのであらかじめご連絡まで。



























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