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混在が望ましい [日常]

いやまあ、私には無理だけどね……

「なるべく薄くてすーっと読める本を作りたい」
私が編集者さんから一番よく聞いた台詞である。
これは私がお世話になっている某社だけに限ったことではなく
お話をさせていただいた数社がほぼ同じ内容のことをおっしゃっていた。
要するに、内容、物質的ともに『重い本』は売れないらしい。
(ノンフィクションやベストセラー作家と言われる方々の大作を除いて)

出版不況と言われ始めてから長い。
本を買う人が減少する一方で、売れているのは軽く読み流せる本ばかり。
まあ、そのおかげで私などが物書きの列の最後尾にいられるわけであるが
果たしてこれでいいのだろうか……と首を傾げている。

これまで本を読むのが好きだった人達は今、何を読んでいるのだろう。
ちゃんと読み応えのある本に出会えているのだろうか……
さらっと読み流せる本に埋もれて、
重いテーマの人生のあれこれを考え直させられるような良作を
見つけられなくなっているのではないだろうか。
もしかしたらもうそんな作品は出版されていないのかも知れない。
読書離れが進む中、売れる本を作るのはやむを得ない。
そうしなければ出版社が潰れてしまうのだから……
でも、出版される本がすべてそうなってしまって
選択の余地すらなくなったら
これから本を読み始める子どもたちはどうなるのだろう。

わかりやすくて、楽しくて、すーっと読める本。
それは厳しい現実を生きる大人にとっては必要不可欠な娯楽だろう。
殺伐としたニュースばかり流れてくる毎日だからこそ
さっと読めて、楽しくて、ほっこり出来る作品が求められる。
けれど大人になる過程にある子どもたちが
そういった本しか読まなくなることは大いに危険だと思う。
重くて難しいテーマの本を、大人ぶって読む。
ほとんど理解できないにしても、一冊の中の一文ぐらいは
心に引っかかる文章に出会うかも知れない。
そんな一文は静かに心の底に沈んで、大人になったある日
ぽっかりと浮かんでくる。
そうか……あれはこういうことだったんだな……といきなり悟る。
それは本当にセンセーショナルな体験なのだ。
そのためには文章を沢山沈めておく必要がある。
わからなくてもいいから「まず読む」ことからだ、と思うのだ。

わかりやすいことは悪いことじゃない。
でもわかりにくいことだって悪いことじゃない。
両方が一定の割合でまじりあって存在する。
そんな状態が望ましい。
過去に優れた作品が沢山あるのだからそれを読めばいい。
そう仰る方もいるだろうけれど
できれば現代に即した作品もあってほしい。
軽い本が売れる→軽い本しか売れない→軽い本しか作らない
この連鎖をどこかで断ち切ってほしいと願う。
軽い本ばっかり書いている私が言うようなことではないし
もしかしたら私以外の方は『重いものを書いて下さい!」なんて
詰め寄られてたりするのかも知れないけれど・・・


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お知らせ

拙作 『居酒屋ぼったくり2』 (九月末出荷予定)
セブンネット等で予約開始となったようです。
中身は軽いですが、本一冊分の重量はありますので
カップ麺の蓋押さえにお困りの方におすすめです。(爆)

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コメント 8

ゆうのすけ

普段から 活字が遠のいている(老眼の影響もあり?!日頃は 本は読まないですね。雑誌は見ますが。。。)ので 秋川滝美さんの作品を楽しみにしている私は 数年前の音楽一辺倒の私からしたら びっくりまなこで 今の私を見るかもしれません。
新聞も地域版と三面記事くらいしか読んでなかったのに 前作[居酒屋ぼったくり①]の紙面広告を探すのに (本記事は読まないのに)2面3面とぱらぱらとめくるように。。。^^;前作がかなり好調ゆえ プレッシャーもあるかと思いますが 続編も大ヒット祈願して発売を楽しみにしております。☆
(!いえいえ続編の中身は 温もりと美味しい香りが 更に充満していることでしょう!^^☆)
by ゆうのすけ (2014-09-23 04:52) 

足立sunny

確かに、「居酒屋ぼったくり」は、今度買ったウチのカメラより重かったです(内容は甲乙つけがたい・・・カメラと比較するのも奇妙ですが)。
岩波文庫は全く売れないとしても、軽い本ばかりというのは、う~む、ですね。といっても、重くても軽くても、ここ4年ほど、日本語の本は文庫版の小説&雑記しか買っていないので、嘆かわしい者のひとりです。千ページのめんどくさい英語本は抵抗なく買えるのですが、ですね。
by 足立sunny (2014-09-23 08:05) 

とも

この間本屋さんで、本を色々と
見ていたのですが、ページをめくっては、
なんか、違うんだよなぁと
何が違うのか自分でもよくわからないまま
何も買わないで帰りました。
居酒屋ぼったくり、棚に表紙が見える置き方で
ありましたよ!
いい加減な夜食も、こういう置き方されていて
目に入ったんですよね。
居酒屋2は、ネット本屋で予約しちゃったけど(^◇^;)

違うページの、「ヒトカラ」を読んで
新しいお菓子なのかと思っちゃいました。
1人のカラオケ…なのですね。
by とも (2014-09-23 18:49) 

高遠

「薄い本」と聞いて違うものを思い浮かべた私はかなりの末期かもしれません。……ええ、意味なんて分からないほうが人生楽しめると思います。
 
今の出版物で、重い本というのは本当に難しいのだと思います。社会的なものを書こうとしても禁止用語の嵐だし、少しでも引っ掛かりを覚えた人は被害者面して名無しで攻撃してくるし。重い本を出すたびに出版社の方も気苦労で倒れてしまうんじゃないかと思ってしまいます。そう考えると精神的に薄い本は歓迎されるのでしょうかねえ……。(まあこれも私の勝手な想像ですけれども)

そういえば、最近好きなブランドさんと某清酒処がコラボして非常に飲みやすい日本酒のスパークリングをだされています。日本酒は苦手だったんですが、好きなブランドさんの瓶欲しさに(こういう人もいるのですよw)手が伸びました。日本酒のイメージが一新。逆に日本酒好きさんには物足りないかな?


by 高遠 (2014-09-23 22:05) 

maru

最近は肩こりと本の重さが比例してきて本好きの我が身がうらめしい(^^;)
でも本を手にできる嬉しさは物心ついた時からのものだし、
厚い本を読める自分に大人になったなと思った時はぜんぜん大人ではなかったのにエヘンと感じました(^<^)

携帯やパソコンも便利でいいですけどね

ただ厚い本は場所を取るのが悩みです。



☆足底筋膜炎の原因と考えられているのが

加齢
加重
靴の底

とあったのですぐに出来る足裏に当てるシートの硬さ(柔らかさ)を
考えようかと…




by maru (2014-09-24 22:57) 

HCのS

本の世界もそうですか、今いろんなジャンルにおいて軽さを求める傾向がありますね。
人と人との会話にしても、どれだけ重くならないようにするかで腐心しているような気がします。
子供たちにしても説教じみた会話は受け付けませんよね。サラリとうわべだけの情報を知れば、事足りるようです。
かくいう私もナビ頼りで地図は見なくなったし、知りたい情報はwebで調達しますので、重い本も不要になりました。
それと子供たちの成長とともになぜか懐も軽くなりました。

by HCのS (2014-09-26 20:46) 

cyano

今日の上沢君、勝ち負けつかず。
でも、試合は中田のサヨナラHRで勝ったから良いのです。
上沢君、残り試合から考えて、あと1回か2回の登板になりそうです。
2桁勝利は無理そう。
by cyano (2014-09-27 23:43) 

秋川滝美

ゆうのすけさん

老眼はねえ・・私も本当に苦労してます。
そろそろ真面目に眼鏡を作らなくては!
新聞のチェック、ありがとうございます。
私の書く物はたいていライトで流し読みできるので
読書習慣のない方にこそおすすめだそうです。
いずれにしても、いつも気にかけて下さって
本当にうれしいです。これからもよろしくお願いいたします。

足立sunnyさん

どんなものにしても独占はよくないと思うのです
選択肢があってこそ、ですよ。
軽くて読みやすい物ばかり読んでいると
読解力がつかないように思います。
ある程度力をつけた大人が頭を休めるために
軽い物を読むのはいいと思うんですが・・・

ともさん

実を言うと、私もそんなときがたくさんあります。
読みたい本がないなあ・・・こんなに本があるのに、って。
だったらそういう本を書けよ、と言われたら
速攻でしっぽ巻いて逃げますけど・・・(汗)

ヒトカラ・・確かにお菓子っぽいですね
昔、ピーカラとかピッカラとかいうあられがあったような??

高遠さん

ググってしまいましたよ『薄い本』
そして爆笑しました。
確かに知らないほうがいい世界かも知れません。
でも薄い本という別称は知らなくても
存在自体は知ってるし、主流がどこにあるかも
おぼろげながら・・・これ以上事情通にならないように
気をつけたほうがいいのかどうか熟考中。(爆)

maruさん

やっぱり加重か・・・orz
そうだとは思ってたんですよ、でも先生の優しい言葉に
つい自分を甘やかしてしまいました。
涼しくなったことですし、ちょっと良い靴を買って
せっせと歩かなくては・・・
でも、どうやってその時間を捻出すれば良いのか謎。
血液検査表と診断書を編集担当さんに提出してみようかなあ(やめろ)

HCのSさん

軽佻浮薄の時代ってことですかね。
なんだかしみじみ痛い言葉ですけど・・
科学の世界では評価される言葉でも
物を書く立場としては、あんまり喜ばしくないですね。
でも、懐が軽くなる代わりに気が重くなるので
ちょうどいい・・・わけないですね(苦笑)

cyanoさん

二桁勝利は来年の目標でしょうかね
自分の成績よりもチームの勝利、ってことで
納得していそうですよ、彼のことですから。
来年も期待してます、上沢君!

by 秋川滝美 (2014-09-28 21:32) 

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