SSブログ

低い低いハードル [日常]

親ばかシリーズ 第○?弾(多すぎてカウント不能)

娘が夏休みに入った。
その直前に成績票(本当にペラ一枚でびっくり)をもらってきた。
陸上三昧で、帰宅即就寝、のような生活を送っている彼女なので
成績について語ることはない。
あるわけがない。
ただひたすら『今後に期待』のみである。

いつもならため息と共にそっと畳んでしまい込む成績票だが
今回は違った。
悲惨な成績から目を背けた先の備考欄に
小さく、そして素っ気なく記入されていた文字
その一言に射貫かれた。

『皆勤』

うわああっっっっ! 本当に!?

我ながらどこまで低いハードルなんだと呆れ返ってしまうが
ここ数年の娘の動向を考えると
これは快挙と言うべき出来事である。

幼稚園、小学校、中学校……
とにかく『おうちが大好き』かつ『ひとりが大好き』な娘にとって
学校生活というのは苦痛でしかなかった。
ひとりでいたい気持ちと周囲から浮きたくないという気持ち
その狭間で無理をして他人にあわせては疲れ果て
帰宅してはストレスで家族に当たり散らす
代償行為ですら紛らわせなくなると学校にも行けなくなって
私は何度『体調不良で欠席します』という電話を繰り返したことだろう。
本当は身体ではなく心の具合が悪いのだとわかっていても
親は親でそれを素直に学校に告げることもできなかったのだ。
娘の心のバランスをうまく取ってやれない愚かな親だと認めたくなかったのだろう。

とにかく、そんな調子で娘は一学期に二度や三度は学校を休んだ。
受験期などは本当に悲惨で
休んだ上に、その事実に傷つき、さらに荒れ狂う日々だった。

そんな娘でも来て良いよと言ってくださる学校があり
娘は無事に高校生になった。
昔から走ることが大好きだった娘は陸上部に入り
充実した高校生活(除く お勉強)が始まった
だが中学時代に運動部でもなかった彼女は身体ができていない。
気持ちは走りたくても体力が付いていかず
頭痛を起こしたり、熱を出したり、怪我をしたりで
欠席連絡の電話を何度もかけた。
それでも、それはすべて身体の問題で
心ではないと信じられるようになったことに喜んでいた。

そして迎えた二年生。
夏休みまでのこととは言え
娘は一日も休まず、遅刻すらもせずに学校に行った。
あいかわらず捻挫をしたり、頭痛を起こしていたり
つい先頃は車に轢かれたり(をーーーい!!)もしたのだが
それでも不屈の精神で学校に通い続けた。
これを快挙と言わずしてなんと呼ぼう、である。

娘は以前、少しでも具合が悪ければ、それを欠席の理由にしていた。
でも今は、鎮痛剤は『負けた気がする!』と拒み
どうしても我慢できないときは、えいやっと飲み込み
「そのうち効くよね」と顔をしかめながらも重いバッグを肩に家を出て行く。
無理しなくてもいいよ……と言ってやりたくても
そこから崩れ始める何かを恐れる私に
わかってるよ……みたいな顔で微笑みながら……

そんな日々の繰り返しで得た『皆勤』という文字。
コメント欄に書くことがそれしかなかったのかもしれないけれど
それでも嬉しい。
嬉しくてならない一言だった。

よく頑張ったね、娘。
夏休みが終わっても続けられると良いね。
でもって、もうちょっと怪我を減らせるように
あれこれ気をつけて生活しようね
ハードルなんて低くたっていい
ひとつ飛べれば次だって飛べる
そしていつかもっと高いハードルだって
飛べるようになる
自分を信じていろんなものを越えていけ。


*********************************

【お知らせ】


  いい加減な夜食 外伝(文庫) アルファポリス
  放課後の厨房男子       幻冬舎

  ともに無事刊行いたしました。
  書店等々でお見かけのさいは、どうぞよろしくお願いいたします。

**********************************









人気ブログランキングへ














nice!(7)  コメント(7)  トラックバック(0) 

nice! 7

コメント 7

alphaville

何だか僕まで嬉しくなってしまうお話ですね。
誰に強要されるでもなくお嬢さんは自分の意思で学校へ行き
そして皆勤になった。
とても意義のあることだと思います。

僕自身も父子家庭で独りでいることが多く
ヘミングウェイの作品ではありませんが
独りでいる事に慣れると
大勢の中にいる時の方が孤独を感じる人間でした。
なので学校という場所はとても苦手でした。

孤独を愛するというのは響きは何だかかっこいいものですが
本人にとってはなかなか御し難い感情なのかもしれません。

少しずつでも、確実に前に進んでいくお嬢さんの姿に
僕もとても励まされた気がします。

>放課後の厨房男子
昨日帰りがけに購入しました!
学生の時に包丁部があったらなあ~と
どこか懐かしい気持ちになりながら読んでおります
by alphaville (2015-07-25 15:11) 

ゆうのすけ

いえいえ充実した学生生活を送られているのでしょうね。
高校生になって 親からやや離れ 第二章を走りだした環境がお嬢様にフィットされていたからなのでしょうね。^^
そういえば私も 高校デビューで それまでを一新したなんてことがありましたっけ。。。あまりにも遠い時間になってしまいましたが 今でも鮮やかな記憶なのです。^^;
高二の夏は 今思い出しても まぶしかったですね。☆
何か突出するのも凄いことですが 地道に積み重ねてステップアップして行くのも また凄いことですよね。
*~*;車に轢かれちゃったんですか。。。お怪我大丈夫ですか?
by ゆうのすけ (2015-07-25 21:36) 

足立sunny

車にも轢かれたのに皆勤!
ひ弱な本の虫からは、いい感じで脱却しつつあるようですね。
by 足立sunny (2015-07-26 22:15) 

cyano

上沢くん、今日はオリックス戦で負け、これで5勝6敗。
今年はなかなか上手く行きませんね。

唯一明るいニュースとして、上沢くんの後輩の専大松戸高が甲子園の千葉県代表になったことくらいかな。初出場だそうです。
甲子園は北海道と千葉県を応援します(^^;
by cyano (2015-07-28 22:06) 

FSX

皆勤、立派な成果だと思います。
自分が会社行けなくなって、依願退職。その次になんとか決まった職場でも、頭痛が~胃痛が~とか逃げの一手で休みまくり。
ようやく本年度に入ってからは体調不良の欠勤は無くなりましたが、自己嫌悪有り~の情緒不安定有り~のでまだまだ気が休まりません。
まずは結果が出たと言うことで良かったと思います。ハードルはの高さは本人によって変わりますから、一歩づつ進めば良いのではないでしょうか?
P.S. 外伝と厨房男子御布施させていただきました。まだ、積ん読状態ですが、両作とも(ちら見ですが)面白そうなので読むのが楽しみです。
by FSX (2015-08-01 09:06) 

HCのS

日々成長していく子供たち、特に中学以降は会話の質がガラッと変わっていく
高校あたりになると精神的な熟成を迎えつつあるのか落ち着きのある会話を交わすことができる。そんなシーンを通して子供の成長を実感する日々が愛おしい。高校もそうだけど大学も親に直接成績表が郵送されるので親からの会話のネタとしては重宝する。子の方からの話題はオレオレ詐欺の要素がきわめて高い、 金送れと。 
唯一手元にいる娘も奨学金手続きとかオープンキャンパスとかで慌ただしい。来春には飛び立つんだなと思うとラインでも始めようかな・・・
by HCのS (2015-08-02 07:13) 

秋川滝美

alphavilleさん

かつてひとり上手というのはある意味プラス要素でした。
でも今はプラスと同時に危険要素を含んでいます。
いじめやもっと直接的な身体に危害を加えられる恐れ
ひとりでいるということはそう言った可能性が増える気がするのです。
alphavilleさんもいろいろ大変だったことでしょう。お察しします。
それでもひとりが良いという娘を
はらはらする想いで見守って参りました。
部活に入り人と交わることを覚えた娘に大いに安堵するばかり
ひとりでいたい気持ちを尊重しつつ、誰かと何かを共有する喜びを
得てほしいなんて親のわがままとしか言いようがないですが……

放課後の厨房男子、お買い上げありがとうございました。
お楽しみいただけていると良いのですが……

ゆうのすけさん

一番やりたいことがやれる時期なのかも知れませんね
高校二年生って。
高校生だったゆうのすけさんを想像して
にんまり笑っております。
ダブルデッキのラジカセを駆使してオリジナルテープとか
作っていたのでではないでしょうか……?
あの頃に比べると今は本当に音楽関係の情報収集は
楽になりましたね。
著作権等々うるさいことも増えましたけれど……
あ、娘の事故はそんなにたいしたことはありませんでした。
ただリハビリその他に取られる時間が……って感じです。
ご心配いただきありがとうございました。

足立sunnyさん

事故の影響は、あとから出てくるのだと痛感しました。
直後に夏休みに入ったことが幸いして
学校を休むことはありませんでしたが
通院その他で本人も私も結構支障が……
でもまあ、確かに精神的にも肉体的にも強くなった観はありますね。

cyanoさん

彼の母校は何度もベストフォーに進出しながらも
一度も決勝で勝てたことはありませんでした。
今回もどうせ……と思っていたら見事な逆転勝利。
テレビの前で大騒ぎしてしまいました。
後輩に元気をもらって上沢君もまた頑張ってくれることでしょう。

FSXさん

私も昔懐かし月曜病の患者でした。しかも慢性。
もうこれ以上続けられないかも……と思ったところで
息子を授かり寿退社。ぎりぎりセーフでした。
精神が体調に及ぼす影響はよくわかっているだけに
それを振り切って出かけていく娘は素直に偉いと感じました。
私のような怠惰な親を持ちながら……と感無量です。

拙作お買い上げありがとうございました。
厨房男子はぐっと若い子向きの話ですが、お楽しみいただけることを
祈っております。

HCのSさん

子どもは外に出したほうがいいとずっと思っているのに
ちっとも出て行かないんですよ。
本人の気持ちと経済の壁はなかなか……(苦笑)
HCのSさんのお宅が羨ましいです。
近頃では、もうこれはこっちが出るしかないと思っております。
娘は外に出る気満々で遠方の大学を見に行ったりもしておりますが
さてどうなることやら……


by 秋川滝美 (2015-08-03 08:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0